FAQ

 

Q1:犬用ワクチチェックをいつ使ったら良いでしょうか?

A1:動物病院において考えられる検査の機会は、通常以下の3つです。
・初回のワクチンスケジュール(16週齢で最終接種)終了後の20週齢を目安にノンレスポンダー(ワクチンに無反応な動物)ではないことを証明するため。
・定期的な健康診断
・ワクチン接種履歴のわからない個体を預からなければならない時に隔離処置の必要性を判断するため。

Q2:陰性の結果が出ました。ただちにワクチン接種をするべきということでしょうか?

A2:以前にワクチン接種をしていた場合、抗体は存在しなくてもメモリー細胞によって守られている可能性があります。ただしメモリー細胞を測定する方法は無いのが現状です。様々なワクチンを開発し米国の基準ともいえるコーネル大学では、抗体価がカットオフライン未満の場合は、ワクチンの追加接種をするという判定をしています。臨床的には過去のワクチンに対する副反応やワクチン接種の必要性などを考慮した上でワクチン接種を検討します。詳しくは動物病院の先生とご相談ください。

Q3:結果を示すコームカードの色は、時間とともに消えてしまいませんか?

A3:暗所で保管すれば消えません。ただし、最後にE槽に2分間浸漬していない場合は色が薄くなる可能性があります。ご注意ください。

Q4:定期的な犬用ワクチチェックの使用は年1回で良いでしょうか?

A4:置かれた状況によります。ペット関連施設などからの要請がある場合は、より頻繁な検査が必要とされる場合があります。

Q5:ワクチンの能書に書かれている内容と、WSAVAの「犬と猫のワクチネーションガイドライン」の内容が異なりますが、どちらが正しいのでしょうか?

A5:どちらが正しいとは一概に言い切れません。ご家族に定期的にワクチン接種を受けることのメリットやワクチンが認可されるようになってからも科学は進歩しています。
コアワクチンは追加接種が無くても終生効果が持続するという可能性あることがわかってきました。
その点と副作用などのデメリットなどをお話した上で、ワクチン接種の可否をご相談ください。

Q6:これまでは、1年毎など定期的にワクチン接種をしていました。ガイドラインとこれまでの方針のどちらを信憑すべきでしょうか?

A6:ガイドラインは第三者の研究者がまとめ上げた、最新の科学に基づいた考え方です。
こうしたガイドラインは十分な信頼性があります。こうした研究の成果によって、ワクチンの効果が長持ちするものとそうでないものなどが分かるようになってきました。
そのため、効果が長持ちすることが証明されているワクチンについては抗体検査などを実施し接種間隔を開けることが最新の科学に基づいた治療方法となります。

Q7:犬用ワクチチェックの結果は、その他の検査結果と相関性があるのでしょうか?

A7:CPVではHI(血球凝集阻止反応)試験、CAV・CDVについてはVN(中和反応)試験との相関性が証明され、国内外での承認を得ています。

Q8:昨年と比べてスコアが下がっていますが、ワクチン接種をしたほうが良いということでしょうか?

A8:動物の疾病感染のリスクや飼主の希望などを総合的に判断して注射の可否を選択してください。
抗体が陽性を示していれば、数値に関係なく疾病に対しての予防はできていることが想定できます。

Q9:犬用ワクチチェックの結果が3でした。より安全にするためにはワクチン接種をしたほうがよいでしょうか?検査結果が3よりも5のほうが安心するのですが?

A9:WSAVA 発行の“Recommendation on vaccination for Asian small animal practitioners”のFAQ63によれば、CDV、CAV-2、CPV-2(およびFPV)については抗体価の高低は関係なく、
頻繁にワクチン接種を行うことで抗体価を上げようとすること、「より強い免疫」のために抗体を上げようという試みは無意味である旨が記載されています。
ご参考にしてください。

Q10: 7歳の成犬です。1歳齢でコアワクチンのブースター接種をしてから 3年毎に2回追加接種をしています。今年になって抗体検査をしてみたところ 全て陰性の結果が出てしまいました。コアワクチンの接種をすべきでしょうか?

A10 : 抗体検査で陰性の結果が出て、免疫グロブリンによる液性免疫が感染防御に可能な限界値を下回ると想定される場合でも、細胞性免疫により防御が行われる可能性もあります。
Welborn LV,DeVries JG,Ford R,et al. 2011 AAHA Canine Vaccination Guidelines.JAAHA.47:1-42,2011 のp13,18を参照ください)

しかし、それを証明するためにはウイルスによる暴露試験で発症しないことを確認するしかなく現実的ではありません。
抗体検査はワクチンの効果持続を知るうえで重要な指標となりますので全て陰性の検査結果であれば、基本的にはコアワクチンの追加接種を考慮します。
詳しくは動物病院の先生にご相談ください。

Q11: 抗体検査で陰性でも細胞性免疫または自然免疫で守られている可能性があると聞きました。 それはどういう事を意味しますか?

A11: ワクチンは、一度侵入した病原体を記憶し、次に侵入しようとした時に速やかに戦い身体を守る以下2つの免疫メカニズムを応用したものです。

・体液性免疫・・・B細胞が形質細胞へ分化して、抗原に特異的な抗体を産生するもの
・細胞性免疫・・・抗原に特異的な感作T細胞が誘導されて免疫現象を担うもの

生ワクチンは細胞性免疫(侵入した病原体を細胞ごと破壊する)が主体となって防御する病原体に、不活化ワクチンは液性免疫(抗体によって病原体の毒性を中和)が主体となって防御する病原体に、それぞれ高い効果が期待ができます。

抗原特異的B細胞による特異抗体産生や、感作T細胞による免疫現象は獲得免疫と呼ばれます。獲得免疫は、抗原特異的であること、免疫学的記憶があることが特徴です。
免疫学的記憶(メモリー)は、一度抗原に感作されたT細胞やB細胞は特異的な受容体を持ちクローン増殖するためにそれがメモリーB細胞、メモリーT細胞として残存しているために起きる現象です。ワクチンのブースターや自然感染といった免疫刺激が無ければ、抗体は時間が経つにつれて減っていきます。
それに対してB細胞の記憶は長期間存在します。抗体が低くなっても、ワクチンの抗原刺激があればB細胞の記憶をもとに免疫グロブリンが迅速に、数時間のうちに再度産生され、抗体価が上昇します。

自然免疫は食細胞(好中球、マクロファージ)、補体、ナチュラルキラー細胞が担当します。早期の感染防御に重要な役割を果たしますがメモリーは残らないとされてきました。しかし、最近の研究からは、ある程度のウイルスの種類にも対応することが判明しています。また、自然免疫は獲得免疫の反応を惹起する重要な役割をはたすことが知られています。

抗体検査で陰性の結果が出て、免疫グロブリンによる液性免疫が感染防御に可能な限界値を下回ると想定される場合でも、細胞性免疫による免疫学的記憶や自然免疫による獲得免疫の誘導などによって感染防御に役立っている可能性は否定できないのです。

Q12: 反応用プレートの各漕への浸漬時間は正確でなければいけないでしょうか?

A12: はい。各反応時間は正確に測定してください。市販のタイマーをご活用いただくことをお奨めいたします。
無料iPhone/iPadアプリの 『複数タイマー管理 – romer』 を使用することもできます。下記URLからスマートフォンにダウンロードすることもできます。
https://appsto.re/jp/6gXZ_.i

ダウンロード後は、個別に時間の入力設定が必要です。

『複数タイマー管理 – romer』での設定例

Q13:現在のところ日本では、コアワクチンだけの犬用ワクチン製品が流通していません。 3つの抗体検査のうち、1項目だけ陰性となった場合、どのようなワクチン接種を選択・推奨すれば良いのでしょうか?

A13:2014年に出されたWSAVAのアジア向けワクチネーションガイドラインでは、単価ワクチンが流通していない場合に以下の方法を推奨しております。
「必要な抗原のみが入っているワクチンまたは他の成分との組み合わせの数が出来る限り少ないものを選んでください。」
Recommendations on vaccination for Asian small animal practitioners: a report of the WSAVA Vaccination Guidelines GroupのP.7 Table5 より